ISスペシャルインタビュー

追い求めたのは
感性に訴えかける
「操る楽しさ」 取材・公開日 / 2020.11

小林 直樹
Lexus International
チーフエンジニア

より高精度なプレス技術を採用した、新しいISの世界観

全長4.7m前後、欧州でいうところのDセグメントのセダン市場は、メーカーの屋台骨を支える基幹モデルがひしめき合う。そんな激戦区において、スポーティなデザインと運動性能の高さで好評を博しているレクサスISが、さらなる進化を遂げた。チーフエンジニアの小林直樹氏に新型ISの開発にかけた思いを聞いた。

IS350"F SPORT"。ボディカラーはソニッククロム<1L1>。三眼フルLEDヘッドランプ(ロー・ハイビーム)&LEDフロントターンシグナルランプはメーカーオプション。

「SUVの台頭でセダンに元気がないという声もあれば、SUVからセダンに乗り換えるケースが増えているという声もあります。いずれにしても並みのセダンでは埋没してしまいますから、新型ISはデザインと走りの二本柱を貪欲に追求し、飛び抜けた存在になることを目指しました。そうやって妥協を一切排したものが本物の価値として、お客様に伝わるのではないかと思います」

見どころのひとつ、スタイリング。「ワイド&ローかつ流麗なクーペのように」とデザイナーが描き出したイメージスケッチそのままの造形を実現するために、プレス技術から見直しを行ったという。
「あのシャープで複雑なキャラクターラインを、割れずに変形せず、いかにプレスで実現できるか。私は、レクサスのプレス技術は世界屈指の高さだと自負していますが、それでも今回は一筋縄ではいきません。今までのやり方では歪んだり、パキーンと割れてしまうのです。最終的には寄絞り(よせしぼり)型構造という新しい技術を導入して実現できたわけですが、そこに至るまで製造現場はトライアンドエラーの繰り返し。私は、失敗したパネルを何枚も見てますが、多分、それはごく一部。私の知らないところで数え切れないくらい試作を繰り返していたはずです」という話からもうかがえるように、新型ISのスタイリングは、まさに彼らの知恵と努力の結晶なのだ。

IS350 ”F SPORT”。インテリアカラーはホワイト。
IS350 ”F SPORT”。ボディカラーはソニックイリジウム<1L2>。

ドライバーとクルマが対話できる、胸躍る走りへ

小林氏率いる開発チームの熱意は走りにも表れている。
「新技術を随所に盛り込んでいますが、『操る楽しさ』という点においては特効薬のようなものはなく、地道な作業の積み重ねでしか目指す境地には辿り着けません。今回大切にしたのは、意のままに操れる上に、ドライバーの力量に応じてクルマ側から何かしらのメッセージが伝わってくる感覚。それを私は『対話』と呼び、開発チーム全員に対し口酸っぱく言ってきました。例えばコーナーを駆け抜ける際、スピードもステアリングの角度も完璧だと、すっごく気持ち良く走れますよね。逆に、ちょっと速かったとか、ステアリングを切るのがわずかに遅れたとか、微妙なズレがあった場合、性能が高いクルマはちゃんと曲がってくれますが、フィードバックはどこか心地良くない。そういうやりとりがドライバーとクルマの対話。ささいなレーンチェンジひとつとっても対話が楽しめるんです」

走りの魅力について更にこう続ける。
「ゴルフをする人なら分かっていただけると思うのですが、最近のクラブは性能がいいので、芯に当たらずとも、ボールはそこそこ飛んでいきます。でもやはり芯にミートしたほうが飛ぶし、気持ち良い。新型ISとの対話は、それと同じ。対話を通して、操る楽しさが味わえ、運転がどんどんうまくなっていくのです。『クルマって購入したあたりが嬉しさのピーク』といった話を耳にすることがありますが、新型ISは、その嬉しさの度合が購入後もどんどん高まり、長く乗れば乗るほど新しい発見や作り手の想いを感じていただける、そんなクルマを目指しました」

IS350 ”F SPORT”。ボディカラーはソニックイリジウム<1L2>。

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