LCスペシャルインタビュー

挑戦の象徴として生まれた
フラッグシップクーペ 取材・公開日 / 2017.06

佐藤恒治
Lexus International
常務理事兼チーフエンジニア

クラス最速レベルの変速でリズムを生み出す走り

FRスポーツカーの基本をしっかり押さえ、"慣性諸元"を磨き上げることで美しいデザインを生み出したLC。そのパワートレーンは2つある。ひとつは5リッターV8エンジンに新開発のトルコン式10速ATを組合せたもの。走りのキャラクターはずばり「ザ・スポーツカー」だ。
「最近のスポーツミッションの主流はDCT(※1)になっていますが、それでもLCがあえてDCTではなくトルコン(※2)を採用したのは、走り出しの滑らかさというのがレクサスのDNAであり、それにはやはりトルコンが適しているからです。一般的にトルコンは構造上、変速が遅いというウィークポイントがあると思われていますが、LCはそれを徹底的に改善して、変速タイムが0.2秒とクラストップレベルを実現しています。ギアの段数は最初から10段と決めていたわけではなく、走りのリズム感を追求した結果です。マニュアル変速は、ドライバー自身が走りのテンポを作っていく楽しさがありますよね。LCではその気持ちよさを大切にしました。それくらいの自信作。

LC500(V8エンジン&10速AT)
LC500h(マルチステージハイブリッドシステム)

もうひとつのパワートレーンは、世界初となるマルチステージハイブリッドです。これもスポーツドライブを存分に楽しんでいただけます。ハイブリッドというとエコなイメージがありますが、実はスポーツカーにも向いていて、レクサスはハイブリッドのパイオニアとしてもっともっと発展させていく使命がある。私はそう考えています」

  • ※1 DCT:ダブル・クラッチ・トランスミッション
  • ※2 トルコン:トルクコンバータ

マリブビーチでのクルージング、大切にしたかったのはその余韻

アメリカ西海岸にはパシフィックコーストハイウェイという世界でも指折りの絶景ロードがある。そのビューポイントのひとつ、マリブビーチはハリウッドスターをはじめセレブリティと呼ばれる人たちが多く訪れる。LCの似合うシチュエーションのひとつとして、佐藤氏の頭の中にあったのは、そのマリブビーチだ。
「LCを購入されるようなお客様は、すでにいろいろなラグジュアリーブランドのクルマを乗ってこられて、品質や性能だけでなく"走りの味"についてもよく理解されていると思います。そのような方々が、限られたオフタイムを使って自らステアリングを握って運転するわけですから、そこにある楽しさは、刹那的なものではなく、もっと余韻のあるものでなければならないと考えています。例えばパシフィックコーストハイウェイをドライブした後、マリブビーチを眺めながらコーヒー片手に一服して、しみじみと『楽しかったなぁ』と思える。そんな余韻こそがLCの価値だと考えています。LCのカタログの走行シーンはトゥルーストーリーで、実際に開発につかったアメリカのワインディングやマリブで撮影したものなんです」

挑戦に限界はない

LCが採用した新開発のプラットフォームは、モジュールという概念を取り入れているのが特徴で、今後登場するFR車にも採用されることが決まっている。
「LCでしっかり性能を出せれば、この後に続いていくFRの商品群というのは、その性能をさらに熟成させていくことができます。今回特に明確にしたかったのは"走りの味"です。
初代LS以来、レクサスが大切にしてきた素直なハンドリングを一段と磨き上げ、ドライバーの感覚に寄り添うようにレスポンスを鋭くする。それがLCの開発キーワード『より鋭く、より優雅に』につながっていきます。LCの開発を通して改めて思ったのは、クルマづくりに終わりがないということです」
クルマづくりに情熱を燃やし、心揺さぶる体験を生み出すレクサス。その挑戦に限界はない。

佐藤恒治 とLC(LCキャラバンのイベント会場にて)

※このインタビュー記事は、本サイト独自取材のもので、開発責任者インタビューシリーズ、バックナンバーです。
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